生きづらさを克服し、望む明日を掴む

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SF短編小説 まだ未完成な空(仮 4

 ライブ開始50分前、すでにライブ会場は大盛況だ。各々、このライブのために作ったのだろうか、凝ったアバターで集まる姿が見受けられる。啓斗、ののみ、蓮、浅見、英佑の五人は関係者席にいた。
「それにしてもまさか、浅見先輩の言ってた知り合いが堂上先輩だったなんて驚きました。」
 英佑が心底びっくりしたと言うような様子で啓斗に耳打ちしてきた。当の堂上優本人はライブの参加バンドと込み入った話があるとかで席を外している。啓斗と優は仲が良いので、優がバンド活動をしていることなどは知っていたが、まさかこんな大きなライブに出演するバンドともコネクションを持っているなんてまるで知らなかった。改めてなかなか侮れないやつだと啓斗は優を再認識した。
「顔近いぞ。まあそれは確かに驚いたけどさ~ 俺、あいつと結構仲良いつもりなんだけど、肝心なことはあんまり喋らないんだよな。」
 啓斗が微妙な顔をしてそう言うと、英佑は首を傾げて率直な意見を述べる。
「それはあれですよ。先輩、まだ完全には信用されてないってやつじゃないですか。」
「だとしたらショックだぜ。だってもう一年以上友達やってんのに、そろそろ信用してもらえないと俺だって辛いぜ。」
 啓斗が大げさに傷ついた様子を見せると、英佑はちょっと焦っていた。英佑は啓斗以上にわかりやすい性格なので、啓斗がすると弄りがいのある相手だった。英佑は、普段あまり使わない脳の部分を使うかのようにゆっくり、言葉を選びながら話し出した。
「なんて言うか、啓斗先輩は、堂上先輩のことあんまりいわゆる普通の枠にはめて考えない方がいいような気がするんですよね。堂上先輩はなんか他の人と比べるとなんか深い色々を抱えてそうって言うかそんな気がするんです。」
「英佑にしては深いこと言うんだな。」
「にしてはとか言うのやめてくださいよ。俺なりに先輩のこと思って考えて発言してるんすから。」
「分かったよ。ありがとう。」
 こそこそ話に気を奪われていると、後ろから肩を叩かれた。
「啓ちゃん、何こそこそ話してんの~?」
 振り返ると、まさに話題の当事者である優が立っていた。優のアバターは普段より髪が長く、首元が隠れるくらいまであり、いつも以上に中性的な印象を受けた。学校の姿、そしてこのアバターの姿、どちらが優の見せたい本当の姿に近いものなのだろうか。啓斗は優の姿を見てボーっとそんなことを考えていた。
「the end of chaosとこんな繋がりがあったなんてどうして教えてくれなかったんだよ。」
 啓斗が不満そうにいうと、優は笑って、
「たまたま話す機会がなかっただけだよ。the end of chaosのボーカルが同じ小学校の先輩でさ、ずっと仲良くしてもらってたんだ。」
そこで一度言葉を区切って、其の後、
「そんなことよりも、今回のライブ、僕のバンドも少し時間もらえて演奏できることになったんだ。」
 興奮気味にそういった。優はいつもふわっとしているというか落ち着いているタイプなので、珍しいことだった。しかし、ここまで大きなライブ会場で演奏の機会をもらったのだから当然だろう。優のバンド、Niji no neは街中の小さなライブハウスでしかまだ演奏したことがない。そのなかでは、高い評価をもらいファンもいたが、ここまで大勢の前で演奏するのだから緊張も当然あるだろう。 
「凄いじゃないですか、優先輩。the end of chaos と同じ舞台で演奏するなんて大チャンスですよね。」
 英介が同じように興奮気味に言う。啓斗は驚きすぎて言葉も出ないようだった。